目次 | 第3部 応用編 | 海底地殻変動観測
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1.測地学のフロンティア 2.海底間相対運動 3.海陸相対運動 4.海底精密測位 5.上下変動観測 6.傾斜・ひずみ観測

海底地殻変動観測 − 海底のプレート境界は測地学のフロンティア

 地震や火山活動など地球という惑星の特徴的な活動の大部分は,図1に示すようなプレート運動に起因しており,その原動力は,沈み込んだ海洋プレートが周囲のマントルよりも高密度となり沈降することである.当然の帰結として,海洋プレートが沈み込んでいる海溝域とそれを生成している中央海嶺が地球上における2つの主要な変動帯となっている.実際,大地震の大部分は沈み込み帯で起こっており,中央海嶺の海洋底生成活動は地球上のマグマ活動の8割近くを占めていると推定されている.しかしいずれの活動も,電波も光も届かない深海底で起こるために,その実態はよく分かっていない.

 1980年代から90年代にかけて,測地学はプレート運動の実測という重要な課題に取り組み,画期的な成果をあげた.各プレートは一定速度で運動しており,その速度は地質学的時間スケールで推定された速度とほぼ一致することが確認された.90年代の終わり頃から,測地学はいよいよプレート境界の変動を明らかにするという課題に取り組み,GPS観測網が威力を発揮しつつある.しかし最も活動的な変動帯は電波の届かない海底にあり,観測の空白域である.海底のプレート境界は測地学のフロンティアの1つであると言えよう.



図1. プレート運動の模式図(http://www.ucmp.berkeley. edu/geology/tectonics.htmlより). ここでは,いろいろな時代の大陸移動のアニメーションをみることができる.



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