目次 | 第3部 応用編 | 海底地殻変動観測
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1.測地学のフロンティア 2.海底間相対運動 3.海陸相対運動 4.海底精密測位 5.上下変動観測 6.傾斜・ひずみ観測

海底地殻変動観測 − 海陸の相対運動の観測

 プレート境界のうちでも沈み込み帯は,大きな被害をもたらすプレート境界型の大地震が頻発する場所である.最近では,GPSなどの陸上の地殻変動観測や,同じ場所で繰り返し発生する地震の解析などから,プレート境界面における滑りの分布は一様ではなく,固着している部分と,定常的に滑っている部分があると推測されている.場所によっては地震を起こさないゆっくりとした滑りもあるらしい.しかし一般に海溝軸は陸から100kmから200kmも離れており,陸上での地震や地殻変動の観測だけでは,プレート境界の滑りについて確かなことは分からない.一方,沈み込み帯における変動帯の幅は一般に100km以上もあるので,海底間の音響測距でその変動を捉えることも難しい.

 そこで,海上のGPS測位と海中の音響測距を結合し,海底の位置を2-3cm程度の精度で測定するシステムの開発が進められている(次項参照).その観測を3-4年間繰り返すことにより,陸上を基準とした海底の水平変動を捉えることが目的である.現在のところ海底精密測位の試験観測は米国と日本で進められている.その一例を図3に示す.1点で数日間観測したときの測位の再現性については,2cmから5cm程度と推定されている.海底の上下変動の観測については海底地殻変動観測(5)参照.


図3. 高い確率で発生が予測されている宮城県沖地震の想定震源域(赤:前回の震源域,青:連動する可能性がある海側の震源域)と,最近設置された地震及び地殻変動の観測網(東北大学大学院理学研究科付属地震・噴火予知研究観測センターWebサイトより).



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