目次 | 第3部 応用編 | キネマティックGPS
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1.キネマティックGPSの原理 2.仮想基準点方式 3.キネマティックGPSの応用

キネマティックGPS − キネマティックGPSの原理

 GPS衛星からの搬送波を用いた高精度の相対測位法の中でも,移動する物体の位置を瞬時瞬時に2〜3cmの精度で決定していく手法をキネマティックGPS移動体測位)という(図1).移動体の位置をリアルタイムに把握する場合はリアルタイムキネマティックGPS(RTK GPS)と呼ぶ.よほどゆっくり動くものでない限り,1秒に1回かそれ以上の高頻度で計測することが一般的である.元来,工業的応用として発展してきた技術であるが,地球科学においても最近注目されつつある.

 GPS干渉測位でcmの精度を得るには,受信システムを長時間静止した状態でデータを取得し,いわゆる整数値バイアス(ambiguity)を解くことで高精度の測位を実現している.このような静止測位と異なりキネマティックGPSの場合は長時間の静止状態を得ることが不可能であるので他の手法を用いている.例えば,整数値バイアスを解く場合に,データ取得時の衛星の異なる組み合わせから最適な解を選択する,というような手法をとる.このような手法を用いる場合は可視衛星数が多いほど良く,最低でも5衛星が必要である.

 キネマティック測位ではこのような作業を初期化と称していて,必須のことである.位置計測中は衛星数が5未満にならないような観測条件が必要となる.衛星数が5未満になるとキネマティック測位ができなくなるばかりでなく,その後可視衛星数が多くなったときには再度初期化をする必要が生じる.

 1データ(エポックとも称する)取得毎に測位する手法のほかに,数秒から数分間のデータ取得で測位を行う方式もあって,いろいろな呼び方があるが総称してキネマティックGPSと呼ばれている.

 なお,この移動体測位は基準点をおいて計測する相対測位の一種として登場したので,いわゆる単独測位は,それ自体で移動体の測位を実施できるが,キネマティックGPSの範疇には入れないのが普通である.しかし,最近では搬送波位相を用いた高精度の単独測位によって移動体をcm精度で計測できる手法も考案されており,「キネマティックGPS」の定義の範囲は次第に変化している.


図1. キネマティックGPSの利用.



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