目次 | 第3部 応用編 | プレート間カップリング
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1.プレートテクトニクス 2.地震サイクル 3.横ずれ境界における相互作用 4.沈み込み帯における相互作用 5.関東地方のカップリング 6.アスペリティと固着域 7.用語

プレート間カップリング − 横ずれプレート境界における相互作用のモデル

 プレート境界の固着による影響は地表で観測される地殻変動に現れる.横ずれ型のプレート境界周辺で非地震時の地殻変動を観測すると,図3左上のような地殻変動パターンが得られる.

 こうした非地震時の地殻変動は以下のように説明できる(Savage and Prescott, 1978).横ずれ型のプレート境界を挟んだ両側のプレートが一定速度で剛体的に運動する基本状態を考える.これはプレート境界に全く固着が無い状態である.実際のプレート境界周辺における地殻変動を再現するには,プレート境界の固着の影響を表す補正項を加えることが必要である.

 非地震時の補正項としては,プレートの相対運動に伴って境界面で進行するずれを打ち消すようにプレートの相対運動と逆向きの仮想的なすべり(すべり欠損)を与えれば良い.このすべり欠損の大きさや与える範囲がプレート境界における固着の強さや固着域の広がりを表す.地殻内で地震が発生する深さの下限や大地震の震源域から横ずれ型プレート境界の固着域は通常10-20kmよりも浅い部分に限られており,それよりも深い部分でプレートは定常的にすべっていると考えられている.

 一方,地震時には地震に伴う瞬間的な断層のずれが補正項となる.プレート境界面における正味のずれは,上で述べた基本状態と補正項の和として与えられる.プレート境界では非地震時には断層のずれが無く地震時に一気にずれてプレートの相対運動に追い付くことになる.図3の一番下には,このようなプレート境界の地震サイクルに伴う断層のずれの時間変化を基本状態と補正項とに分解して示した.このように分解することで,地震サイクルの中で時間的に変化する分をすべて補正項からの寄与として考えることができる.


図3. (a)非地震時の地殻変動を説明する模式図.(b)プレート境界面のずれの時間変化をすべり欠損で説明する模式図.

参考文献
Savage, J. C. and W. H. Prescott(1978):Asthenosphere readjustment and the earthquake cycle, J. Geophys. Res., 83, 3369-3376.



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